はじめまして、かがやくさくらです。
このブログでは
すでにその本を読んだ方はもちろん、まだその本を読んでいない方・読もうかどうか考え中の方などにも楽しんでいただきたいので、
あらすじはできるだけ最小限に、
感想においてはネタバレを避け、心が動いたポイントやおすすめの点などを上げていこうと思っています。
完全に私的な感想になると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです♪
【山本文緒 パイナップルの彼方 あらすじ】
父のコネで就職。安定した収入を得、好きなイラストで副業もし、優しい恋人もいる。
会社では円滑に人間関係をこなし、ひとり暮らしを満喫し、何不自由ない生活をしていた深文(みふみ)。
だが、ひとりの新入社員の女性が配属されたことで、そのバランスが崩れていく。
【ネタバレなし 感想と考察】
〇平成初期の山本文緒さん作品
本書が文庫化されたのは平成7年。
いきなりバブリーな結婚式から始まるので、当時を知らない私としては読みにくいかなと思ったのですが、そこは山本文緒さん。
やっぱりすいすい読ませてくれました。
女性は結婚して子供を産むのが当たり前だという時代。
当時は女性が自分でお金を稼ぎ、ひとりで生活していくという形を選ぶことは、いろんな意味で難しかったそうですね。
本書にはそんな時代を感じるところが随所にありますが
深文の
心の中では毒づいていたり、自分のことを棚に上げて勝手なことを思ったりする言動
ちょっと黒い部分があるキャラクター
は、人間誰でも多少はこんなとこあるよねと、妙な安心感を与えてくれます。
友人月子・なつ美との関係ややり取りも、まさに「気の置けない友人」といった感じで、こんな関係を築けている深文が羨ましくて眩しかったです。
物語は、父のコネで入社したOL深文を中心に、恋も仕事も長続きしない月子、念願叶って結婚・出産をしたなつ美、それぞれの人生が描かれています。
〇痛い共感
月子の生き方に呆れながら、また一方で、なつ美のように結婚して誰かと共に生きていくことなんて考えられないと思っている深文。
彼女には安定した職もあり、そこでの人間関係もうまくいっていて、好きなことを副業にもできていて、恋人もいて・・・
すべてがうまくいっているはずでした。
ですが、ひとりの新入社員の登場で、そのバランスが崩れていってしまいます。
この、職場の女性同士のなんとも複雑の人間関係、他人事ではないんですよね・・・。
職場を含む深文の事態はどんどん悪化していき、いたたまれなくなっていくのですが
逃げたい。
でも逃げない。
その姿と心情が痛くて、でも共感と応援する気持ちが湧きました。
全編を通しては
こうすればいいのに
とか
なんでそんなことするん
とか
いろいろ思ってしまうんですが、深文の言動には一貫して根本的な違和感がありません。
それは、ちゃんとひとりの人間としてのキャラクターが確立しているからかなと思うんですね。
〇やっぱり山本文緒さんが好き。
今までにも、「恋愛中毒」「眠れるラプンツェル」「群青の夜の羽毛布」等々・・・
たくさんの山本文緒さん作品を何度も何度も読み、また、このブログにも記事を書いてきました。
そんな私にとって、本書は久しぶりの山本文緒さん作品。
本当に久しぶりに、山本文緒さんに触れました。
なんとも言えない閉塞感というか
どうしようもない感情を書くのがとてもお上手な山本文緒さん。
多分たくさんの人が感じているけれど、日常に埋もれてしまってなかなか言葉にできないような感情
を、代弁してくれる作家さんだなぁと思うんです。
そんな山本文緒さんが書く世界だからこそ、深文がどうなっていくのかと読む手が止まりませんでした。
今更ながら改めて、お亡くなりになってしまったのが悲しくて仕方がないです。
もう新しい作品を読むことは叶わないけど、山本文緒さんが残してくださった作品をずっと大切にして読み続けていきたいと思ったお話でした。
【個人的 五つ星評価】
山本文緒さんらしさ度 MAX
痛い共感を感じる度 MAX
読む手が止まらない度 MAX
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