はじめまして、かがやくさくらです。
このブログでは
すでにその本を読んだ方はもちろん、まだその本を読んでいない方・読もうかどうか考え中の方などにも楽しんでいただきたいので、
あらすじはできるだけ最小限に、
感想においてはネタバレを避け、心が動いたポイントやおすすめの点などを上げていこうと思っています。
完全に私的な感想になると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです♪
【辻村深月 嚙みあわない会話と、ある過去について 概要】
大学時代、部活で仲の良かった男友達・ナベちゃんが結婚することになった。
でも紹介された婚約者は、何か少しズレていて・・・(「ナベちゃんのヨメ」)。
国民的アイドルになったかつての教え子。小学校教諭の美穂は、彼との再会を喜んでいたのだが・・・(「パッとしない子」)。
なぜか他人事とは思えないような、そんな人の心裏を描いた、全部で4編からなる短編集。
【ネタバレなし 感想と考察】
〇すごく好きな短編集
決して綺麗なだけではない人の内面を描いたお話が好きな私にとって、本書はものすごくハマった短編集でした。
めっちゃ語りたい。
ということで今回は最初から、ひとつひとつの短編について個人的五つ星評価と共に書いていきますね。
〇ナベちゃんのヨメ
最初の一文からもう掴まれました。
女子たちの間で、「どうやらナベちゃんのヨメはヤバいらしい」という噂が流れます。
その女子たちは、ナベちゃんの大学時代からの友人たち。
大丈夫??もっといい子がいるんじゃ・・・
そんな話題、ざわめきは、実際にナベちゃんのヨメに会ったことで加速していきます。
まったく同じではないけど、私にも少ーーし似たような経験があったので食い入るように読んでしまいました。笑
積極的な悪意じゃなくても、
うわぁ・・・やば・・・
って顔を見合わせるようなあの感じ。経験がある方も多いのでは・・・
ですがラストには目からウロコ。その発想はなかった。
すごく勉強になりました。
〇パッとしない子
かつての教え子、佑は今やだれもが知る国民的人気アイドル。
小学校教諭の美穂は、周囲から佑の子供時代のことを聞かれるたび「パッとしない子だった」と答えてきました。
ですがそんな美穂と再会した佑は、美穂に青天の霹靂とも言えるような衝撃的なことを話し始めるのでした。
嚙みあわない会話と、ある過去について
このタイトルが一番ダイレクトにしっくりくるお話だと思います。
噛みあわないって怖い。
何が真実かわからないって怖い。
と思うけど、誰かが言った言葉に傷ついて、ずっと忘れらないことってある。
たとえ相手が覚えていなくても。
でも自分が何気なく言った言葉で誰かを傷つけている場合もあるんだろうな、きっと。
と、自分を省みずにはいられない。
〇ママ・はは
スミちゃんとヒロちゃんは共に教師。
スミちゃんの引っ越し準備をしながら話していたふたりの話題は、「ヒロちゃんのクラスの困った保護者」のことから、次第に「スミちゃんと母親の過去」へと移っていきました。
極端ともいえる母親に育てられてきたというスミちゃんの模写は妙にリアルで、少し自分と重なる部分もあってゾッとする。
いくら親子でも分かり合えないことはある。
スミちゃんの言う「子育ての正解とは」の答えが、今の自分には沁みました。
そして怖くなった。
〇早穂とゆかり
ずいぶん昔のことを振り返ってみて、今更ながら
あの時は悪いことしたな
傷つけていたかも
無神経だったかも
なんて思うこと、時々あります。
思い出したくないような恥ずかしいこともある。
自分が被害者だと思っていたのに、実は自分が悪かったのかと気付くことも。
特に小中学生の頃の話なんか思い出すと、いろんな意味で恥ずかしいことは多いです。焦
早穂とゆかりは小学校時代の同級生でした。
人気者だった早穂。嫌われていたゆかり。
そんなゆかりは今や大成功した経営者。早穂はそのゆかりに、仕事でインタビューをしに向かうのですが・・・
これもまた噛みあわない。
「パッとしない子」でもそうだし、現実世界でもそうですが、何が真実かなんて立ち位置によって変わりますよね。
もうそれは仕方ないんだろうなと。
無意識に言葉を発して無自覚に人を傷つけてることって、思っているよりも多いのかもしれない。
〇と、ここまで感想を書いた上で
ここまでの完全に「噛みあわない」までは行かなくても、どれだけ思い合っていたとしても、完璧に伝え合うことなんて無理ですよね。
別々の人間なんやから。
例えばうまくやり取りができなかったとして、上手く伝わらなかったとして、
それが自覚できていれば伝えようもあるし、お互いに修復・修正もできるけど
それでも関係性・タイミング・自身の問題・・・その他いろんな理由で、それができる場合の方が圧倒的に少ないのかもしれない。
もしかしたら、今近くで笑ってくれている家族とか友人との間にもそんなことがあったのかもしれないと思うと、すごく怖くなると同時に
それでもきっとお互いに修正し合ってきたから今があるんじゃないか、それって実はすごく素敵なことなんじゃないかと思ったりもしました。
ものすごい考えてしまった。汗
決して派手さはないテーマですが、どこか共感を覚えるお話。
そんなお話を、ここまで書いてくれる辻村深月さんはすごいです。
【個人的 五つ星評価】
最初の一文から掴まれる度 MAX
痛いような共感が得られる度 MAX
自分を省みてしまう度 MAX
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