ネタバレなし 湊かなえ ポイズンドーター・ホーリーマザー

湊かなえ

はじめまして、かがやくさくらです。

このブログでは

すでにその本を読んだ方はもちろん、まだその本を読んでいない方・読もうかどうか考え中の方などにも楽しんでいただきたいので、

あらすじはできるだけ最小限に、

感想においてはネタバレを避け、心が動いたポイントやおすすめの点などを上げていこうと思っています。

完全に私的な感想になると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです♪

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【湊かなえ ポイズンドーター・ホーリーマザー 概要】

女優の弓香は、かつて同級生だった里穂から同窓会への誘いを受けた。

しかし、弓香は昔から変わることのない抑圧的な母と会いたくないがために、欠席を表明する。

しばらくは里穂とメールで連絡を取り合っていた弓香だが、思うがけない訃報を聞くこととなり・・・(「ポイズンドーター」

そしてその後日談である、「ホーリーマザー」

母娘・姉妹・男女。

それぞれの目線で様々な真実が描かれた、全部で6編からなる短編集。

【ネタバレなし 感想と考察】

〇湊かなえさん「らしさ」

本書はひとつのお話を除き、母と娘の関係が書かれています。

これは以前、同じ湊かなえさん『母性』『豆の上で眠る』についてのブログでも書いたのですが、

湊かなえさんの書く母親の模写は独特で、ある種の毒をはらんでいるように見えるんですね。

他の作品でもそのような母親がたびたび出てきますし、このリアルさにはいつもいつも驚かされるんです。

これ、私の中では「湊かなえさんの象徴」です。

本書も例外ではありませんが、そのリアルさ=しんどさ湊かなえさん「らしさ」なんだろうなと思います。

今回はひとつひとつの短編について、個人的五つ星評価とともに書いていきますね。

〇マイディアレスト ★★★★★

一番好きなお話です。

このお話では、姉と妹が描かれています。

同じ両親から生まれ同じ環境で育っても、見ているものや感じるものが同じとは限らない。

「他の兄弟の中の両親」が、「自分の中の両親」と同じとは限らない。

それを改めて感じるとともに、ここで書かれている閉塞感もすごくよくわかりました。

そして、最後に話がこう繋がるのか!と。

本当にうまいと思いますし、私にとっては表題作になっている「ポイズンドーター」「ホーリーマザー」よりも、

本書と言えばこのお話

というイメージです。

〇ベストフレンド ★★★☆☆

脚本家を目指す3人の男女のお話。

本書で唯一「母と娘」が描かれていません。

ですが、人の心の綺麗ではない部分を容赦なく書いています。

にもかかわらず、自然と入り込んでしまい、続きが気になり一気に読めてしまいます。

〇罪深き女 ★★★★★

とある家電ストアで突如刃物を振り回し、死傷者を複数出したことで現行犯逮捕された男。

お話は、子供の時にその男と同じアパートに住んでいた女の証言、という形で語られていきます。

読み終えて感じたのは

本当の被害者は誰なんだろう

ということです。

事実はひとつですが、真実は人の数だけあり、それは人によってこうも違うものなのかと思い知らされるんです。

これは湊かなえさんの作品を読んでいて、いつも思うことです。

ですがこのお話はそれだけではない、さらに歪んだものが書かれているように思います。

その歪みの原因・背景・その他諸々を考えると・・・

「ある登場人物」は、その歪みに気付くことができるのか。

気付かない方が幸せなのかもしれないなと思ったりもする、とても怖いお話です。

〇優しい人 ★★★★★

バーベキュー広場で、とある男性が殺害されました。

一緒にバーベキュー広場を訪れていた女性が容疑者となるのですが・・・

このお話でも、それぞれの目線で見えている真実や、語られている事柄のズレが書かれています。

これが、私にとっては戦慄レベルのものでした。

それぞれの背景も書かれているので、「なぜこうなったのか」はとても分かりやすいです。

ですがそれもまた、本当に恐怖。

どうすれば良かったのか

ということを、読後しばらく考えてしまったお話です。

〇ポイズンドーター ★★★★☆

最後の「ホーリーマザー」に続くお話です。

娘側を軸にし、はっきりと毒親をテーマにして書かれています。

この「ポイズンドーター」は「ホーリーマザー」と対になるお話として書かれているのだと思いますが、

私にはどうもそうは思えませんでした。

「ポイズンドーター」は言葉にできない閉塞感・圧迫感・抑圧が伝わってきて、他人事とは思えなかったんですね。

ここで終わるのか!

という、湊かなえさん節も良かったです。

〇ホーリーマザー ★★★☆☆

「ポイズンドーター」の後日談となっており、こちらは母側(の周り)を軸に書かれているお話です。

先ほど「マイディアレスト」でも書きましたが

同じ環境にいる兄弟姉妹でさえ、物事を同じ目線で捕らえ感じることが難しいこともあります。

ましてや母と娘の関係、辛さなど、他の人にはわかり得ないですし

人の苦しみは、本当のところはその人にしかわからない。

他人にとやかく言われることではないと思うので、「ポイズンドーター」ではそう言う部分がうまく書かれているなぁと思ったんですね。

ですがこの「ホーリーマザー」では、主要となる人物の立ち位置がよくわからないためか、

その主張も例え話も私にはよくわからかったんです。

もちろん賛否はあると思いますが、私には正直不快感が残ってしまいました。

とはいえ、

やはり全体を通してはとても面白い短編集だと思います。

【個人的 五つ星評価】

湊かなえさん作品の中でのイヤミス度 ★★★★★

母と娘を書く、湊かなえさんらしさ  MAX

ホラーを感じる度          ★★★★★

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