はじめまして、かがやくさくらです。
このブログでは
すでにその本を読んだ方はもちろん、まだその本を読んでいない方・読もうかどうか考え中の方などにも楽しんでいただきたいので、
あらすじはできるだけ最小限に、
感想においてはネタバレを避け、心が動いたポイントやおすすめの点などを上げていこうと思っています。
完全に私的な感想になると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです♪
山本文緒 プラナリア 概要
「無職」であることがテーマの短編集です。
全部で5編。
それぞれの主人公はみんな、上手く行かない「何か」を抱えています。
そんな5人の心の内、そして現実の向き合い方とは。
ネタバレなし 感想と考察
私が初めて本書を読んだのは、今から二十年以上も前。
まだ二十代の頃でした。
当時は、他の作品に比べパンチがないと感じてしまったんですね。
他の作品とは、私が勝手に「山本文緒さん三大作品」だと思っている
恋愛中毒
眠れるラプンツェル
群青色の夜の羽毛布
のことです。
ですが、もう何度読み返したかわからない本書。
何度も読み返していると、また感じ方が変わってくるものですね。
アラフォーになってから改めて読むと、年を重ねたせいなのか響くものがたくさんありました。
言葉にできないような感情や、苛立ちや葛藤。
やはり、そんな内面を表現するのがとてもうまい山本文緒さんです。
私は中でも次の三作が印象に残りました。
〇プラナリア
表題作であるこのお話は、自然と各登場人物の気持ちになって読み進めていました。
乳がんになった主人公。
彼女の気持ちはよくわかります。
そして周りの人の言うこともわかるんですね。
でも、やっぱり主人公の気持ちがよくわかる。
小説をたくさん読んでいると、1ミリも共感できない登場人物が出てくることってありますよね。
中には、誰にも共感できない!(でも面白い!)という作品もあります。
私はこの人により共感できる、という感情もよくあることだと思います。
ですがこのお話は、みんなの気持ちがわかって・・・
なんとも言えない気持ちになりました。
〇ネイキッド
一部、ある部分で涙が出ました。
大人って、人間ってそうなんだよなぁ
人間関係ってそうなんだよなぁ
と。
いきなり心をキュッとつかまれるような感覚。
やはりこういうところが山本文緒さんの上手さなんだと思います。
終わり方も良かったです。
〇あいあるあした
このお話だけが男性の主人公です。
彼の内面の模写である「ある部分」には、こちらまで胸が熱くなりました。
冒頭の一文が伏線になっているのですが、その繋がり方がとても秀逸です。
そして、またここでも感情を持っていかれました。
「わかっているように」見えても、人ってわからないものですね。
決して絶望的な感情ではないんだけれど、
自分のことを本当にわかってくれている人って、この世の中にいるんだろうか。
私自身も、そばにいてくれる人たちのことをどれだけわかっているんだろうか。
そんなことを考えてしまいました。
それでも、誰かといることってそう悪いものじゃないなぁと思わせてくれるお話です。
個人的 五つ星評価
心をキュッとつかまれる度 ★★★★★
山本文緒さん「らしさ」度 ★★★★★
読むたびに味が出てくる度 ★★★★★
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